NO.5 バックパックの中身と静かな街ベロラド



7月11日

 六時起床、体育館の手洗い場で歯をみがき 出発やはり パンプローナに続きログローニョは大きい。

↑朝のログローニョ

 町の郊外に出るときれいに道が公園みたいに舗装されており 朝のジョギングやウォーキングしてる人がいて 歩いていると昨日ジェライから聞いた この地方で採れる赤い御影石のモニュメントが道端にいくつも現れた。

これが赤の御影石

 この道はカミーノでもあり郊外にある公園ともつなげる道で俺はその公園に入り並木道を進んだ そしたら小さな休憩所があり中では 白髪でひげを生やしたおじさんがいた 巡礼者を助けるボランティアだ 休息を取るにもいい時間だったし 俺はこのおじさんにスタンプを押してもらい おじさんが巡礼者に記帳してるノートに記帳し 隣のベンチで休むことにした。
 おじさんは「日本人か?」と聞いてきたからハイと答えた おじさんは俺に「リンゴがあるから食べなさい」と俺にリンゴをくれ「ビスケットもあるぞ」とつづけざまに言い ビスケットもくれた、おじさんは募金箱は置いてはいなかった 失礼かと思ったが俺自身が忘れない為に写真を撮った

 リンゴもビスケットも食べ終わり辺りを見るとオジサンが作ったであろう木で出来た杖が何本もあったそれには2007カミーノと書かれてある、 俺はおじさんに「これもらってもいい?」と聞いたオジサンは「もちろん!」と言ってくれた、 俺はその杖を手に取りバックパックを背負った そしたらおじさんは俺の出発を察知し 再びリンゴを指さし「歩きながら食べなさい」とリンゴをもうひとつくれて、俺は「ありがとう」と言いった おじさんはさらに最後に「良いカミーノを!」と見送ってくれ、俺はおじさんに背を向け何歩か歩いたら… 


 涙が出てきた

 自分を強くするだの言い ふらふらとやって来た俺にオジサンは、ただ優しくしてくれた 俺はおじさんに何もしてないのに なのにおじさんは優しかった  俺はただ このおじさんに これからいっぱいイイ事があるようにと願った おじさんのこれからがただ幸せであることをねがった。 

 泣きながらリンゴを食い坂道を登る、 思い出すのは父と母で、昨日は体育館だし連絡はしていない 無事でいるかな? そしてある事を考え始めたそれは いつかは訪れてしまう 父と母との別れの日、必ず遅かれ早かれやってくる こんなことを考えた こんな事を考えたとしても 突如としてやってくるその日を簡単に受け入れらるはずがないのも分かっている  過去少しだけ留学してて親元を離れてた時があったけど、はなれた時は親孝行しようと思ってはいたのだが いざ親元へ帰れば 甘える事しかしなかった わかってはいるんだけど…      
 でもこの明るい日差しの中カミーノを歩いていると不思議だ いずれ父と母は俺の眼の前からきえてしまう もしこれからそうなってしまっても それでも父と母は俺のそばにいてくれるんじゃないかと そう思えてくる これをこうも自然に思わせてくれたカミーノはすごい所だ。 (まだ死んでないけど!)

 関節の痛みはいつもの事だが 足の筋肉が慣れてきたからか 楽になってきている 今日の町ナヘラに到着メインストリートで中華料理屋を見つけたがアルベルゲを見つけるのが先である ちょうどそこでピレネーで世話になった気功の達人モッズ親子が現れアルベルゲに案内してくれた、さらにモッズのお父さん 俺の鼻の日焼けを見て 薬を塗ってくれた ありがとモッズお父さん!

 この後中華を食いに行こうと思ったが 歩いて戻るほど余力は無く近くでお決まりインスタントパスタを買いアルベルゲのキッチンで作って食べた、 今日は珍しく 今まで会った仲間 ほぼ全員と同じ部屋で再開 会うたんびに「オウ!」ってお互い言いあった。
 さらにはそこで日本語のプリントされたTシャツを着た50歳ぐらいのアジア人に会った、「日本人ですか?」と尋ねると日本語で「韓国人です」と答えてくれた 名前は、キム・ヤンジュ、日本に何年も留学していたらしく日本語ぺらぺら これから先一緒に泊まることもあるでしょう!



7月12日

 今日も6時起床 まわりには知ってるやつら こうなるとそれぞれの性格が見えてくるパトたちはもうすでにいなく ジョシュ達は全然まだ寝ていた  別に早く行くことが良いわけではない 自分のペースで行く事が大事だから。  
 俺は昨日白髪のおじさんからもらった杖を捜したが 誰かが間違って持って行ってしまったらしい まぁ誰かが使ってんならそれもいいだろう 出発! 町を抜け朝日が差し始めるその光が赤土の大地をより赤くしていた

↑明方のナヘラ近く

 6キロぐらい歩いた町アソフラのバルで朝食(ボカディージョとコーラ)を頼んだテレビでは連日の牛追いを報道していて昨日の負傷者の映像が流れ その中の男性が牛の角で背中を刺されて血を流している映像が流れていた あと二、三日はやるだろうな 
 残ったボカディージョを包んでもらい 歩きながら国の文化や習慣について考え始めた 

 世界中の文化はその土地やその時の状況などが作り上げ、その場に必要なものだったんだよね 日本の文化だって必要とされ誕生し今も存在し続けている 与えられた土地や状況が世界各国違うのだから考え出す文化も違って当然、  
 違う状況を与えられていただけなのに その国の文化などを否定することはできないはずだ、唯一否定できる者たちがいるとすれば それはその文化を持っている当人達であるべきだ、必要がない文化であったらとっくに彼ら自身の手によって消されているはずだから 宗教もまた同じな気がする。

 今日も日差しは強い この日差しが周りの麦畑をまるで砂漠のように見せる 日差しのせいで暑いし! さらに歩いてるから汗はかく ほど良いきつさの小山を登り切ると そこは地球ではなかった。

 小山からは町全体が見え さらにその周囲が砂漠のような麦畑に囲まれている 明日に進まなくてはいけない西の方も 砂漠のようになっていて先が見えないが 以前とは違い 今はこのバカでかさが 心地よい この星その物の魅力 SF映画の中にしかないと思ってた スターウォーズか!

  今日はこの街サントドミンゴでステイ ここのアルベルゲは元地主の家のような大きさで部屋がいくつもあった俺は一番上の屋根裏部屋にベッドをとった 周りは全員スパニッシュ英語は一切聞こえない。
  シャワーを浴び、洗濯をし、1人でバルに飯を食いに行くが時間が少し早かったためコーラを頼みディナータイムまで時間を潰す  そこでバルにいた巡礼者に話しかけられた 「サンティアゴよりも先の町フェニステレに行くのか」と言われ「もちろん!」と答える、四十ぐらいのおっさんだった これから先また会うだろう サンティアゴは当然だがフェニステレも当然行く  そこが一番西で海が見れるからな!

  時間になり巡礼者メニューのポークソテーにパクつきながら お代わり自由のワインをがぶ飲み、イイ気分! お勘定済ませようと思ったら店主はコーラ分の勘定を足していなかったので ちゃんとコーラ分を申告し勘定をすませ外のアイス自販機でアイスを食う(ほろ酔い気味)楽しいこの道!!

7月13日

  昨晩酒を飲んだせいか夢見良かった 今日も砂漠のような麦畑をひた歩く 

  ボーっとしながら歩いていた 

  油断していた 

  何を考えてたのか覚えてない 

  辺りを見回してもカミーノの矢印や貝のサインが見当たらなく  前を歩いている巡礼者は誰一人いなかった  そこで道を間違えている事に気づいた  少し焦ったが後ろを振り返ると俺について来た巡礼者が何人もいた 安心したと同時に自分のミスでみんなを巻き込んでいた事に気づく   
  そこにスペイン人老夫婦巡礼者が現れ「前を歩いている巡礼者を見たか?」と聞かれ俺は「見てない間違えたごめんなさい」と言った 彼らは不慣れな英語で優しく  「OK、OK」と言ってくれた    彼らと共に1キロ弱歩いて戻った 二人は間違えるのもカミーノだという事をわかっているんだと思う さすが人生の先輩!

  そんなふたりと次の街で朝食をとるクロワッサンとカフェドレチェ(暖かいカフェオレ)カルロス夫妻は二人とも教師をしている そんな夫妻に豆知識を教えてもらった、カルロスという名を英語にするとチャールズとなるそうです 勉強になります! 彼らはブルゴスで今年の巡礼は終わるそうです 取れる休みも個人で様々だからね   
  カルロス夫妻は「私たちは歩くの遅いから先に行きなさい」と言い ブルゴスでの再会を約束し 別々に歩きだした、気温はそれほど高くないのに汗はだくだく トラックのうんちゃんがクラクションを鳴らし[ガンバレヨ!]の合図 俺はそれに手を振る。 思ったより今日は疲れが早くきたので午後一時過ぎ24キロでベロラド のプライベートアルベルゲにステイ。

  プライベートだけにかなりこのアルベルゲは新しい シャワーもベッドも全部新しい バルも一体型、そのぶん10ユーロで高かったが朝食付きだ  今日は少し早めにストップしたので身辺整理をして10キロ以上あるバックパックを少しでも軽くしようといらない衣類、いらない資料、食えるか怪しい食糧などを外に出したそして ゴミ箱に食料を捨て 資料も捨てそして衣類のパンツやTシャツを捨てようと思った時、

  俺の感受性はえらい事になった 

 それは自分の都合だけで持ってきたこの衣類や食料を、自分が歩くのを少しでも楽にするためだけに捨ててゆく この自分を最低と思ったからだ、ホント自分の都合しか考えてないな

 だけど この感情は少しづつ治まっていきて 俺はその衣類を誰かに使ってもらえるようにテーブルの上に置いてきた おかしな日だ カミーノがそうさせるんだろうか?

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