NO.8 麦畑に忽然と…




7月19日

  朝起きると巡礼者の半分ぐらいはもうすでに出発していた、荷仕度をしベッドの下をチェックするとパトがカミーノの村々のアルベルゲが載ってる(出発地サンジャンピエドポートでもらった紙)資料を忘れているのに気がついた、届けないとな!  
  さぁ出発!  パトも歩くの速いから 中々出くわさない 気がつくとカリオン デ ロスコンデスに着いていた

  町の中を歩いているとバイクの爆音が聞こえてきた、そこは古い民家の玄関で80歳ぐらいのかわいい爺さんがエンジンのかかったバイクをユラユラとを家の前までおしていた、そこへおばあさんも奥から現れ、朝の陽ざしの中おじいさんにゆっくりと何かを伝えていた、爆音とは正反対でおだやかな感じだ、そして爺さん話が終わるとゆっくりとアクセルをふかし大爆音で出発していった おばあさんに買い物でも頼まれたのだろうか、 爆音だったけどホントにおだやかな感じがした 何か理想的なカタチを見た気がする。

  街も抜け再び殺風景の麦畑の道をひた歩く、しばらくすると途中四方40mぐらいの広さの更地を高さ30mぐらいの葉っぱの少ない木々が周りを囲うエリアが見えた平坦な麦畑の中それはとっても目立つ 中に入ると取り囲んでいる木は日陰を作っていた、そして奥にはコンテナを改造したバルがある イスとテーブルが何セットもある、こんな麦畑の真ん中じゃ浮いた雰囲気もするし、日差しの中ではここはオアシスに見える 

  そこではすでにアメリカンのミスターデービッドが休んでた、俺はバルでトルティーヤを頼み、待ちながら、デービッドにパトリックを見たかと尋ねる、すると「彼はこの屋台に目もくれず先に行ってしまったよ」との事まだ先のようだ そこにヨハンナがやってきた、彼女の方が長く歩くだろうから彼女にパトのマップを渡した、さらに後からカール&レベッカが来た

  ついて椅子に座ったとたんやはりレベッカは喋り出した「歩いてたら虫がうざかったわ、さらにさっき車が通ったから危うく その車をヒッチハイクして、サンティアゴまでって言いそうになったわ!」とね

  たしかに残り半分になっても体はしんどいしな 800キロ、車だったら1日あれば着くだろう、飛行機なら2時間ぐらいか、俺も空の飛行機見るたびに1,000年前の巡礼者はこんな便利な世の中を想像出来なかっただろうなと思った、すごい世の中だ。 それをただ ひた歩くって!  俺ら原始的!

  トルティーヤも食べ終わりカール達より先に出発する、1時間ぐらい歩いただろうかCalzadilla de la Cuezaにてパトリックに再会、紙をヨハンナに預けた事を伝えた、こんなだったら渡さなければよかったな、すまんパト! まぁとりあえず再会を喜んだコーラで乾杯!
  パトに今日はどこまで行くんだと尋ねる「今日はまだ決めてない、たぶんこの先の町レディゴスまでかな、わかんないけど!」気ままな感じこれもカミーノ、次また再会することを願い、俺は彼と別れ出発した、午後になり一番日差しが強い時間

  

  

  痛みと一歩一歩 歩く、この痛み気がつくと歩く上での当たり前の事になっていた。

  小さな丘を越えると左側が広大なひまわり畑になっていて

  

  明るく、きれいで、 そして何よりこのひまわり達が、俺たちを見ていけ、この土地を見ていけ、そして忘れるな、と言ってる気がした 一歩一歩の足をこの大地に縛りつけられ、見させられてるような感じで、カミーノを目に焼き付けろって言ってる 俺だって忘れたくない 

  この地平線に向け歩くしばらく歩いたら、地形は少し窪地になり さらにしばらく歩くと次の町レディゴスが現れた、それなりに大きくよさそうな町で泊まるにも良い時間だったが、ここから隣町のアルベルゲまでは3キロしかないので通過することにした、たかが3キロといえども、もうすでに30キロ以上歩いてる 足にはそれなりにキツイ 無心で歩くと大した距離ではないのだが、たかが3キロと考えながら歩くと体感時間が長くなる

  まぁそんなんでも、歩き続けてるから必ず着くもんで テラディジョス・デ・ロス・テンプラリオスらしき所に到着
  俺は今までどうりの小さい村を想像していたが、ここは村ですらなかった、ただアルベルゲだけが、ダダっ広い麦畑にポツンとある感じ、村でもないから民家も商店もなし、このアルベルゲだけがある、まさに、ビッグメセタ! 
  このメセタ地方はずっとこんな感じだ、幸いなことにこのアルベルゲはプライベートで新しく、設備も整っていてバルもある、部屋も6ユーロから9ユーロまで種類があり清潔だ、まぁもちろん俺は6ユーロのドミトリーを選んだ
  そこでおもしろカップル、アンナとグレッグと再会、相変わらずラブラブ一緒にシャワー浴びてるよ しかも長げーよ!

  洗濯も終わりアルベルゲの外で日記を書きながら、夕日で赤くなった麦畑を眺める 日中は歩いているから、夕方の時間は至福の時だ この巡礼もとうとう後半になった、半分過ぎたという時点で俺は終わりを感じてしまう、今まで歩いた距離を確かめ、‘よく歩いたな〜’と思って振り返る、ふっと我に返り、この旅が全然、途中であることに気づく、でもなぜか、フワフワしてしまう、終わってないのに!

  夕飯を食べにバルへ向かう、中では、何組かの巡礼者がペアで座っていたが、眼鏡をかけたおっさんが1人で座っているテーブルがあったので、かけてもいいですか?と英語で尋ねる、が返事はスペイン語で帰って来た、 彼は生粋のスペイン人、こんな時こそ、旅会話の本、それと身振り手振りのコミュニケーションでなんとか分かる、彼は子供が二人いて、過去にはサンティアゴまで歩いたらしい、今回は自転車でサンティアゴまで向かっているそうだ、そんな彼も今回は時間がないから自転車だけど、カミーノは歩く所で自転車で行く所ではないと言っている 聞いた話じゃ途中で自転車投げ出して、歩き出す人もいるぐらいだからね! 

  何かがその人をそうさせるのだろう。



7月20日

  起床今日も、日の出前から出発、テクテク歩いてたら少し大きめの町サハグーンが先に見えてきた、あと1キロぐらいで町に入れるのに、目の前にあるのにカミーノの道はなぜか右へそれていく

  奥にサハグーンが見えるなのに、右へ行かねばならなかった、さすがカミーノ!少し突き進んだら、古い教会が現れた、見たところ現在は使われてはいないようだ、俺はここで休息を取る事にした
  辺りはだれが捨てたか分からないゴミが散らばっていた、気がついたからには、少し拾う事にした 我がままな自分の罪滅ぼしか 善行をしてやろうという偽善か 他人のごみを何十個も拾って、大きなゴミ回収ボックスにいれ再び歩き出した

  サハグーンには着いたのだが、なかなか遠回りだったな 町の入り口すぐの小さなパン屋さんに入った二十歳ぐらいの女の子が一人で店番をしていた 俺はパンを選ぶ、女の子は明らかに外国人の俺を警戒していた、顔見りゃわかる パンを決め包んでもらっている最中、俺は彼女につたないスパニッシュで話しかけた 

  「俺はハポン(日本人)で今カミーノを歩いてるんだ、そしてサンティアゴまで行くんだ」と、そしたら彼女は笑顔を見せてくれた、何を言ってくれたのかは解らなかったが、最後に彼女は「ブエンカミーノ!」と言って俺を送り出してくれた、ありがとう!何かがクリアーになった感じだ! 

  パンをくわえまた歩く、街を出ればやっぱり麦畑と思いきや この辺はもう刈り終えていた さっぱりしちゃってる

  道端の草むらではネズミがチューチュー鳴いてます、刈り残しの麦でも探しているようだ、空はデカイしサイコーだ。

  今日はエル・ブルゴ・ラネーロでステイ! 今日はアルベルゲ二つある中の募金制の方にステイした、韓国人のヤンジュとスペイン人カルレスと再会カルレスにビールをおごってもらう、アルベルゲでイベリコ豚のハムをパンにのせ食う、うまいです、気がつけば俺とヤンジュで話していた、ヤンジュにもう一杯とさそわれて場所をかえバーで再びビールをおごってもらうありがとうございます! 

  最初の話題はカミーノと言う道についてだ、まだ終わっていないのだが、今現時点で言葉で表すとするならば、すべて物の理想の形を見せてくれているような気がする、ログローニョ公園のおじさんやジェライ、アルベルゲのおじさん、僕にブエン・カミーノと言って応援と無事を祈ってくれる人たち、そしてピレネー山脈や麦畑、ウシ 馬 ヤギ ナメクジ、イヌ、いろいろ見て、俺はこうありたいという思想や理想的な世界がでてきた、そんな感じです、まぁまだつづく旅だけどね。 
  さらに次の話題お互いの国、日韓の話いろいろ互いにあったけど、1人の人間同士だと向き合う事が出来て、争いにはならない、けど政府、メディアを通すと変わったりする、こういった隣国同士の問題って、世界規模だといっぱいあるんだよね、ここスペインとポルトガルもそうだし、国単位で考え、同国の皆を守る、しいては自分を守るという考えで行くと、相手の国とはうまくいかなくなる  インターネットでの噂などではなく 直接会って話してからじゃないとわからないよね。

  ヤンジュとアルベルゲに戻り、茶を飲んでたら、アルベルゲの入口にロバが現れた  さらにその後に、ヒッピーみたいな連中が10人ぐらい入って来た、ちょっと前にカナダ人のチャールズが見たと言うヒッピー集団は彼らの事か!
  先頭の男の名はアルタイール、彼らはこのロバと巡礼している、このロバに積んである食糧で彼らは 飯を作り始めた、俺も負けじとパスタを茹でる、アルベルゲのキッチンは小さいからみんな大変、だから自然と会話にもなる、アルタイール達と日本のアニメの話題とか話した、

  パスタも茹であがり席につくとそこに既に1人分料理が皿に盛られていて、アルタイール達が「お前のだ!」といってくれた、ご飯にサラダをのっけたタコライスみたいな料理と俺のパスタ! 
  もちろん俺のパスタもみんなにシェアした、さらにみんなでサクランボを食べ始め、 そしたらみんなで種の飛ばしあいになって

  他の巡礼者に怒られた

  そりゃそうだ大人10人が種の飛ばしあいだもん、 その後アルタールが俺に「明日は何時に出発するんだ?」と聞いてきた、俺は6時に出発だと答えると「おいおい!何言ってんだよ、気楽に行こうぜ、俺らはいつも8時に出発してるんだお前もどうだ?!」と、彼らを見て楽をしているとも思ったわけでもない、実際ロバは食料運びで彼ら自身はちゃんと歩いてる
  ただ昨日も一昨日も旅を初めてからずっと起床6時だったから、このままで変えないだけ 彼らも俺を理解できたのか 次の再会誓い 今日は床についた   

  夜中ロバが発情期か何なのかさわがしかった

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