NO.11 田舎町ルイテランのスーパーシェフ!




7月26日

  相変わらず一晩寝ても足の痛みは残る、昨日からスパニッシュしか聞こえてこない、誰にも会わない

  山を下り 1時間ぐらいでポンフェラーダが見えた、かつて巡礼者を守っていた、聖堂騎士団の街  
  大きな要塞があり城壁には十字架の覗き窓がある、今は修復作業中でいたるところに足場が組まれていた、 中には入らず外からこの要塞を眺めるだけして、次へ向かった 

  きつい日差しの中、途中の公園で休むことにした屋根のあるベンチに座っていると、地元のおじいさんが歩いてきて「オーラ!」、俺も挨拶したら隣に座ってきて スペイン語で話し始めたけど、俺はわからないので 俺はあいづちしかしなかった 内容は一切わからず けどおじいさんになぜか抱きしめられた 柔らかい胸板 女かと思った。 

  カカベロスここのアルベルゲは小さな教会の周りにロッジのような部屋がいくつも円形になって取り囲んでいる部屋はせまい二人部屋、 3時頃に洗濯物干しても日が長いから余裕で乾く
  多国籍宴会の時のエマとスコットと再会、彼らを飯に誘ったがもうすでに済ませてしまったとの事で、一人でレストランを探す
  テラスで食事してる スペイン人の俺への物珍しそうな視線が痛い、でもこれに対して慣れてもいる、アメリカにいた時も嫌な眼をされたりもした、
  でも誰にも、こういった差別的なとこもあるし、よくわからない者への恐れがある、自分にもそういう部分がないのかというと、言い切れないのである、他人は自分の写し鏡だ。  

  一人一人にそうゆう態度はよくないと言いたいが、こういう時って扱いを受ける側が変わった方が早い 一呼吸 置き 気にしない。 

  今日の晩御飯は結局 小さいレストランのハンバーガーで済ませ、部屋に戻る、二人部屋なのでそこにはドイツ人のおっさんがいた 名前はフランク、まぁ疲れてたので多少会話したくらいで、俺は就寝した。



7月27日

  朝起きるとドイツ人のフランクはもういなかった、俺も日が上がらない内にアルベルゲを出た、標高が高いせいかとても寒い、なんか一人で歩いてる時間が増えてるような気がする、とゆうか誰とも会わないのだ

  日の光で道や木々などが明るくなる中 最初のパートのカミーノ思い出す 一番つらかった時の事を 二度と歩くまいと思ったのに 今はまた歩くのもいいかなと思い始めてる 

  次は愛する人と 自分だけのペースではなく  その人を気づかいながら歩く 次自分に必要なのはこれかな!

  小山の上に白い家ひとつ、人は住んでいるのだろうか? 忘れられない光景になりそうだ。

   ビリャフランカ・デル・ビエルゾにさしかかる頃、ドイツのフランクと再会し、一緒にバルに入りチョコクロワッサンとカフェドレチェを食べる、あさ8時バルのテレビでテレホンショッピングがやっていて、司会者が掛け布団を紹介している、アシスタントの女の子の布団の触り方がイヤラシイ、しまいにゃ布団の上で足を崩して横になり、カメラ目線で布団をなでまわしている 

  俺もフランクも隣に座っていたイギリス人の巡礼者も朝食を吹き出しそうになった朝8時でこのエロさ、イギリス人も笑いながら周りのスペイン人に「いつもこうなのか?」「エロい商品でも売っているみたいだ」など言って 朝から 爆笑だった。  

  ビリャフランカ・デル・ビエルゾでフランクとも別れ、出発する 大きな道路沿いをひた歩くやっぱりアスファルトは足にこたえる。

  ヴェガ・デ・ヴァルカルセ でステイしようと思ったが、アルベルゲに誰もいなかったので2キロぐらい歩いて ルイテランでステイする事にした、アルベルゲは、いたって普通だが中に入るとダライラマなどの写真が飾ってあった、管理人はブディストのようだ  すべてカトリックと思ったがこういう場合もあるんだな

 管理人が「うちにはスペシャルシェフがいるから、飯を食ってけ」と言われ少し高かったがお願いした(飯代は後払い)。
 シャワーも浴び、洗濯もし宿ノートを読み返してたら、もう一人の管理人が現れた、鼻の穴が大きい(鼻毛が出ている)太っちょオジサン、たぶんこの人がシェフなのだろう言葉は分からないが大声の明るい良い人だ。

 他の巡礼者と会話し夕食まで時間を過ごす、そこで片腕にギブスをしているおばあちゃん巡礼者のエリカと出会う 英語はほとんど通じないが彼女は65歳で  巡礼途中でベッドから落ち骨折したそうだ  そして彼女もまた俺よりもはるかに長い距離2000キロ近く歩いていて、恐らくフランスのかなり上の方からだろう しかも基本的に歩いてるときランニングシャツとランニングパンツだし、途中で帰った オジサンといい、エリカといい、年齢を重ねている人は、迷いがない感じがするよ  年の功? 

 逆に自分の序盤の頃を思い出す、自分で選んだ事なのに苦悩しながら歩いてた頃や  そしてブルゴスで他のみんなも同じ事を感じていた事も 

 俺はまだまだだ

 年寄りは強いな 年を重ねて、強さも重ねる!

  エリカやフランスからの夫婦など10人位でどこから来たのかなどを話し合い過ごす 程なくして飯が来た  すごい豪勢だ

 モッツァレラとトマトサラダ   ポタージュスープ   スパゲティカルボナーラどれもとてもうまい 今までのスペイン料理は何なんだと思うぐらい 奥から思ったとおり鼻穴の大きいオジサンが出てきた、みんなで「ブラボー、ブラボー」言いまくった

 ルイテランはヴェガ・デ・ヴァルカルセと比べても、お店もなくとっても小さい町だ、でもこんなおいしい料理を作るシェフがいるとは! きっとシェフのオジサンはあえてこの小さな村のアルベルゲを選んでいるんだろうな 料理を作って、みんながおいしく食べるとこを見て、みんなが「ブラボー」っていって ありがとうがすごく近い感じがするからかな! そうでしょオジサン! そしてありがとうオジサン! 

 みな食事終え 思い思いの時間を過ごし始める、俺はテラスに出て外を眺めながら 日記を書く 村の家は薄い石を重ねた感じの古い家が多い、貯蓄庫かな? 

 この小さい村の数少ない若夫婦だろうか、スクーターに乗って帰ってきた、ここでも過疎化は進んでるんだろうか? この若夫婦で少しでも活気づくといいな
 巡礼のフランス人夫婦の旦那さんがギターをひきだした 曲は知らない けど心地いい ゆるやかな曲 今日は27キロ歩いた 足はいつものとおり痛いが、この時間空間が愛おしい、もう500キロ以上歩いてる、早いもんだな。



7月28日

 起床して、キッチンにいる名コックのおじさんに昨日のディナー代を払い、どれだけオジサンの料理がウマかったか英語で説明した、朝からとても明るいおじさん、伝わったのか、俺の頭を抱きしめてくれた、次も必ずここへ来る!!  またねオジサン!出発! 

 まだまだかなり山なので緑の木々でいっぱいだ、最初の頃の乾いた大地とは違っている ピレネーで見た黒いおおなめくじが、またちらほら狭い山道の所々現れる

 

 上り道で足がきついが、やっぱりピレネーと比べたら、大した事はないし、いやにならない。
 登りきった先の街ラ・ファバでは動物のオンパレードだった、村の小道を豚、馬、鶏、羊、犬がかっ歩してます

 

 さらに2時間弱とうとうセブレイロについた、巡礼路からの入り口は狭く、そこには巡礼者を迎える、独特な昔からの民族衣装のオジサンがいて、明るい感じで「疲れただろうここがセブレイロだ」という感じで話しかけてきた、日本人の俺を見て珍しそうに喜んでいた オジサンは俺が着いた事を知らせるためか、腰にある大きなベルを振り鳴らし「巡礼者が着いたぞー」という感じで声をあげた、オジサンは俺に教会や村は向うだと教えてくれ、俺はそこへ向かった   木々の通りを抜けたら視界が開けそこは

 雲海だった、こうやって見るのは初めてだ、雲より上にいる、海のようだけど真っ白で、遠くの山の山頂が、ひょっこり雲海から顔を出してる。

 別世界だな、この景色を見れて幸せに思う、忘れたくない この景色を忘れたくないのも当然だが、この景色を見て幸せに思った、この幸せの量を莫大にしてくれるこの価値観も忘れたくない。

 セブレイロは観光地化されていて 観光客も多いから変な感じがする ここのアルベルゲも また雲海がきれいに見えるいい場所だ 朝とかここから見てみたいな けど泊るには早すぎる時間帯なのでまた今度だ 
 今では次の巡礼のプランなどを考えて歩いてたりもする 終わりが近づいてるからこそかな?

 少し歩いた隣町で石造りの小さな教会前に、エリカたちがいて俺にこの教会の上に登り鐘を鳴らしてきなと言ってきた 内側に入ると たくさんの小さな石が積み上げられて壁になっていてそこから長めの石が階段として段々に飛び出ている その階段をおれは上り鐘を鳴らした  イイ事あるかな!! 出発!

 肩にくいこむバックパックの位置をずらしながら エリカとフランス人のマリアとそのお母さんと歩きAlto do poioに到着
 まだここは標高1000mはあると思われる山の上 ここはアスファルトの道路を挟み2軒の店(アルベルゲ)がある、長距離の運転手の休息所みたいな感じでもある。

 夕食はエリカとマリアとマリアのお母さんとのマダム達とお食事会、マリアのお母さんは俺の母方のばあちゃんにすごく似てる マリアの母ちゃんは七十歳超えてるけど俺と同じくサンジャンピエドポートから歩いてるらしい  足が痛いからそんな長くは歩けないと言っているが平均20km歩いてる すごいよね 年齢という概念関係なし! 

 いい飯食っても足は痛い が今は体の痛みよりも このスペインの田舎道を見て 心を満たし幸福感を得ているそれが出来なきゃ、やめてただろうし。

 日常のすべては心を満たすため。

 でも心を満たすのは何なのか、わからないでいる人間もいる。

 だから俺は幸福な人間だと思えてきた。 痛い思いをしつつ色々の物を見れて考え 経験できてる!   サイコー!

 はい、今日はおばちゃん連中と就寝!  

戻る HOME 次へ


inserted by FC2 system